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久司道夫先生との出会い

12月28日、マクロビオティックの大家、久司道夫先生がご逝去されたということを、大晦日に知りました。

私がマクロビオティックに出会った20年ほど前は、まだ日本でマクロビオティックが認知されているとはとても言えない状況で、周囲からはずいぶん変わった事をしていると、奇異な目で見られるような時代でした。

当時、私が働きながらマクロビオティックの料理の勉強をしていたのは、久司先生の師にあたる、創始者の故桜沢如一先生が始められた協会で、久司先生と同世代の、桜沢先生の直弟子さんたちが教鞭をとられており、100歳をこえられた、桜沢先生の奥様であるリマ先生もご健在でした。

アメリカにいらっしゃった久司先生が、様々な活動を通して、アメリカでマクロビオティックの地位を確立し、マドンナやハリウッドスターたちがその食事法を取り入れたという経緯から、広く世界に認知されるようになったことが、日本でのマクロビオティックの再発見につながったことは、私にとっても大きな出来事でした。 アメリカから逆輸入されたマクロビオティックが、その後、日本で急速に認知されるようになったのは、久司先生の存在があってこそです。

私が講演会など以外で、初めて間近で久司先生にお会いしたのは、リマ先生の100歳のお誕生会でした。 その時の、久司先生の力強い握手に驚いた事を、今でも鮮明に覚えています。

そして、先生に最後にお目にかかったのは、数年前の東京での講演会でした。 その時、久司先生が再婚相手の若い奥さまを紹介され、80歳を超えられても、人生をまだまだ楽しまれている様子の先生が、頼もしくもあり、一方で、最初にお会いした時と比べて、10数年を経た先生が、当たり前のことですが、老いを迎えられているという事実に、寂しさを感じたのも事実でした。

その時の先生の、熱心にお話しされている様子が、なぜか、親鳥が小鳥たちに向かって、「あなたたちも飛び立ちなさい」と言っているように感じられたのが、強く印象に残っていました。

そして先日、2015年の年明けを待たずに、先生が旅立たれた事を知った時、その講演会での、親鳥のように見えた先生の姿が思い出され、 「来年からは、あなたたちが飛び立つ時期なのですよ」 とおっしゃったように感じられてなりませんでした。

多分、自分がこんな風に、マクロビオティックに対してもう一度きちんと向き合おうと思っていた時期だったからこそ、そう感じられたのだと思うのですが、先延ばしに、いつかいつかと思っていた事を、ちょっと本腰を入れて考えなさい、と、背中を押されたようにも思います。

マクロビオティックは、単なる食事法、健康法ではなく、人が、自由に、面白く、自分自身の人生を生きるためのシンプルな原則を教えてくれるものであり、また、自然と調和して生きるということの大切さを、教えてくれるものです。

病気や症状は一つのサインであり、それにどのように向き合うのか、そこから何を知るのか、 この地球上で、この時代に「生きる」ということの意味は何か、 そんなことを、私はマクロビオティックを通して学ばせてもらいました。

桜沢先生、そして久司先生が、世界中に蒔かれた種が育って、大きな大木となり、また新しい種を育てていく様子を、単なる傍観者として見続けるのではなく、自分ももう一度、冬眠から目覚めた小さな種子のように、育っていければいいなと、思います。

久司先生、生きると言う事が、こんなに面白い事だということを教えてくださり、ありがとうございました。

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